在宅療養支援診療所 ― 2006/03/01 16:58
medifax(株式会社じほう刊)によりますと、この4月の診療報酬改定で在宅医療を推進する(入院医療を強力に減らす)ために新設される「在宅療養支援診療所」が約1万件になると試算しているそうです。
2006年度診療報酬改定で、在宅医療の要として新設される 「在宅
療養支援診療所」について、厚生労働省は一般診療所のおよそ10 %に当たる約1万施設が同診療所に移行するとの見通しをまとめた。
厚労省は在宅療養支援診療所に移行する見込みのある一般診療
所は、現在の寝たきり老人在宅総合診療料の算定を届け出ている 一般診療所2万1681施設(2004年7月現在)のうち、24時間連携 体制加算(I、II、III)を算定する1万734施設に当たると推計。
ふーん、そうですかねえ、というのが、このまさに『現在の寝たきり老人在宅総合診療料の算定を届け出ている一般診療所のうち24時間連携体制加算を算定する施設』のひとつである診療所をやっている私の感想です。
そもそももこの届け出は、したからといって在宅医療をしなければならないというものではなく、じっさい、私の市でも多数の診療所が届けていますが、じっさいに在宅での看取りまでを熱心にしているところはほとんどありません。
今回の「在宅療養支援診療所」は「寝たきり老人在宅総合診療」よりも、報酬が高くなっているぶんさらにかなりハードルが高いですから、指定を受けようとする診療所はたぶん減るものと思われます。もっとも、減ったからといって在宅医療が後退するかといえばそんなことはないでしょう。
じっさいに熱心にやっている診療所はおそらく届け出すると思われますし、届けでないところはもともとそれほど熱心ではないと思われるからです。
私のところはいまのところもちろん届け出て指定を受けるつもりですが、悩ましいのは、診療報酬で優遇されるぶん、患者さんの自己負担も増えるということです。一人でやってる診療所で、請求書の発送もお代の徴収も自分でやっていると、そういうことがとても気になります。
いまどきの医療 ― 2006/03/02 22:52
在宅療養支援の優遇の裏と表の関係になりますが、いまどきの入院医療の環境もなかなかのものです。
いわゆるアメニティは、このご時勢、いまふうにデザインされて、病院とは思えぬこじゃれたインテリアやファニチャーなんかが並んでいますが、なぁに、見栄えを繕っても中身はどう考えても病院。医療職という人的資源はどう転んでも合理化できるものではなく、規制にがんじがらめになっていて、他の企業のように人件費の削減が簡単にできるものではありません。したがって、数を揃えたまま人件費を減らそうとすれば、できるだけ安い人材を使うしかないわけで、若い人材、安くても働く人を雇うことになります。外国人医療者の導入もおそらく間近。
いっぽうで、サービス業としての医療機関に対する世間の要求はどんどん高くなり、つねに神経の張り詰めた状態で仕事を続けていかなくてはなりません。
初心者や能力の劣る人も数のうちというようなことになりますと、できる人へ負担が増え、その人らが燃え尽きてしまって去っていく、そのような悪循環に陥る危険性も少なくないはず。
けっきょく、患者さんは余裕のない状況での医療を受けるリスクがあり、医療者は低賃金で心身ともに負担の大きい勤務を強いられ、経営者は資金繰りと人材確保に眠れぬ夜を過ごすという、直接関係しているみんながマイナスになる状態が続いているのです。
高見の見物で批判だけしていて商売になるマスコミ、医療機関が儲けられなくなった分の多くをもっていく各種メーカー関係、医療費削減といいつつ反対側で官製談合や無駄遣いで税金を垂れ流ししている官僚組織、そういうところのさらに上前をはねているらしい幻の/闇のなにかなど、一般市民はもっと怒らなくてはならないのではないでしょうか。
還暦近くでめでたくもない誕生日の宵に、おぢさんはじつにそう思ったのでありました。
ナイチンゲール像 ― 2006/03/03 22:38

川西市にナイチンゲール像があることは、地元でもあまり知られていません。オリジナルはロンドンにあるのだそうですが、それ以外では川西のが唯一のものだといいます。
大阪日赤病院での入院で看護婦の献身的な仕事に感激した岡山の宗教家が1936年に建立したものだと、銘板にあります。同じ敷地のなかには日本赤十字社大阪支部が看護婦慰霊塔もおいています。
もともと、阪急電鉄の川西能勢口駅西方の小高い丘陵の端にあって、池田の五月山や大阪平野を見渡せる場所でしたが、駅から近いロケーションがわざわいして周辺が開発され、いまや三方を集合住宅で囲われてしまっています。
最近は感染対策などのためにナースキャップを廃止する医療機関が多くなっていますが、それでもなお看護学生の戴帽式はナイチンゲールの精神を心に刻むものとして大きな意味を持っています。高学歴化などで看護職員の変化も懸念されますが、それでもなお看護職員は医療の中心であり続けなくてはなりません。
しかし、私の業種には戴帽式のようなケジメはないなあ。
頭悪そ~ ― 2006/03/04 20:46
使用しているメールソフト Shuriken Pro/r2 のスパム排除機能のおかげで、最近はスパムメールはほとんどゴミ箱直行となっていまして、めったに読む機会はなくなっています。
でも、たまにマトモなメールがスパム扱いされることがありますので、いちおうざっとゴミ箱の中身も俯瞰しております。まあタイトルと本文一瞥で区別がつきますので、スパムの内容を読むことはほとんどありませんが、たまに気が向いてどんなことを書いたぁるんやろと読んでみることもあります。
で、ときどき見かけるのが、これ書いたやつとても頭悪そ~、というもの。誰かを引っかけるつもりのメールなんでしょうが、意味不明内容混乱でなんのこっちゃ分からんというのがあります。本人は一生懸命に引っかけようと思って書いているのでしょうけど、国語がなってないのですなあ。
これ、集めてみたら本ができるかもしれませんよ。
市長選挙(恥) ― 2006/03/05 19:31
賄賂をもらって検察に逮捕された市長が辞表を出して、たしか明日6日で失職するという。つぎの市長に何人かが手を挙げて、いよいよ市長選挙の雰囲気が盛り上がってきました。来月2日告示で9日投票とのことです。
なんだか賄賂は市長のほうから要求していたようだし、それも車や携帯電話の料金などもあって、なんかみみっちいので恥ずかしい。市長を担ぎ上げた陣営は、賄賂は悪いがこんだけいいこともしたやんかと、自分たちの選択がそれほど悪くはなかったといいたいらしい宣伝もなさっています。しかし、私が得た情報では、この市長、県会議員のころからのタカリ体質があったようで、市長就任当初からその噂がありました。そんなことを所属党派の人たちが知らなかったはずはないのではないか、などと考えてしまいます。つまり、なにをいまさらと思うのです。
もっとも、そんなことは別に私は構いません。政治家には興味はあっても政治屋には興味はないのです。私利私欲のために都合のよい人を担ごうとする動きには、虚心でいればすぐに分かります。政治屋は品がない。ノーブレス・オブリージュなんかと無縁なオヤジは顔に出ますな。
市民団体も動いているようですが、視野の狭い市民活動は窮屈だから協力したくないし、メンツだけで人を立てる組織も嫌い。ということになりますと、もう誰を選べばいいのか分からなくなります。
はてさて、これからの一ヶ月ほどは、いろいろとおもろいことも起こりそうです。幸か不幸か私の仕事関係の団体は隣の市なので、渦中には巻き込まれずにすみそうです。一住民、納税者として冷静に見させていただきましょうかね。
労働対価 ― 2006/03/06 22:53
往診で移動中にラジオをつけますと参議院の予算委員会の中継をやっていました。
タクシーの運転手さんの労働条件の悪さについての質疑、そういえば大阪でタクシー会社のオーナーの巨額相続隠しが露見していました。
タクシー運転手さんの労働条件の厳しさと、そのわりに低い報酬については、私の親族が一時その業界のまっただ中にいたので直接聞き及んでいます。一家の担い手の収入としては、明らかにひどい待遇であると思いましたが、それが普通だとのこと。いま彼はすこし別の業態の仕事をしていて、すこし収入は増えているようで、ようやく人並みかというところのようです。
もっとも、私の業界でも、労働の過酷さ、責任の重さにくらべて、その対価の低さはあまりにもひどいものがあります。看護職の月収の実際を知れば、そのていどの対価で仕事をしている人たちに命を預けるのが怖くなるかもしれません。そして、看護職より上を行くことがない介護職はもっとひどいものです。いまの日本の医療制度のなかでは、人件費の抑制のために国家資格を持った一人前の専門職に月に20万円も出せないのが現実です。こんなことで安心できますでしょうか。
パソコンを操作して何億という金を一瞬にして稼ぐデイトレーダーがもてはやされたり、一本何万円もする高級シャンパンをドブに捨てるようなことをしているホストクラブがあるいっぽうで、時給1200円ていどで命を預かる仕事をしている多くの人たちがいるのです。
もちろん、仕事をしたくても就職先がないという人たちも少なくないのではありますが、しかし、ほんとなんか間違っているのではないでしょうか。
情報漏洩事件 ― 2006/03/07 22:37
自衛隊、岡山県警に続いて愛媛県警でもWinnyが原因での情報漏洩が明らかになっています。この調子では、同様の漏洩がもっともっと出てくるのではないかと思えます。
新聞ではこの事件についていろいろ書いてあります。Winnyが普及しだしてもう数年になると思いますが、以前から情報漏洩事件が報道されていたはずです。にもかかわらず、いまだに同じことがくりかえされていることにあきれます。驚きはしません。世の中にはノーテンキな人たちがどこにでも必ず一定割合でいらっしゃるはずですから、それが自衛隊や警察にもいたということだけで…。
私はどちらかというと(どちらかといわなくても)新しもん好きで、パソコンソフトなどもけっこういろいろ試してみるのですが、Winnyに関してだけは絶対に手を出さずにきました。こういうツールを導入していて、迂闊にファイルを流出させてしまわない自信がないからですし、自分が警戒していてもどんなウイルス類に悪さされるかしれたものではないことを感じているていどには、ネットの怖さを知っているからです。
いま、私(および家族)の端末にはウイルスバスターとスパイバスターを導入してあり、それでも注意しつつ情報を扱っていますが、ともかく用心するにこしたことはありません(もっとも、究極になるとネットに繋ぐなということになりましょうが…)。自動ファイル交換ソフトなんてもってのほかと思っています。
Winnyを導入するということは、いわば「自宅の玄関と応接室を誰でも入れるように公開している」状態だと思います。外部との境目の鍵ほど厳重でない簡単な鍵しかない室内同士は、ごく簡単に出入りできてしまうのではないでしょうか。
そもそもファイル交換って、何を交換するのですかねぇ。
駐車許可の指定 ― 2006/03/08 19:56
訪問診療では当然自動車で移動するわけで、あたりまえですが自動車はどこかに駐車して患家に伺います。患家のどこにでも駐車場があるというわけではなく(そういうお宅は旧家か資産家かであって、めったにありませぬ)、街中ではほとんどの場合は駐車禁止場所に停めてかなくてはなりません。それで、「駐車許可車」という指定を警察署に申請して受けなければならないのです。
ところが、この指定は「医療」では受けられません。つまり「訪問診療」では「駐車許可車」を指定する根拠がないらしいのですね。「緊急往診」の場合は、県医師会を通じて兵庫県公安委員会の指定を受けられますが、これはあくまで「緊急往診」に限られていまして、定期的な「訪問診療」でこの指定を使っても駐車違反になります。
それで、どうなっているかといいますと、じつは介護保険制度の「居宅療養管理指導」を根拠として指定されているのです。「医療」ではだめで「介護」ならいいという、ちょっと逆転しているような制度であります。まあ訪問看護も訪問介護などもこの根拠で指定を受けられますので、いまのところ不具合はないわけですが、医者としてはなんとなく釈然としないのが実感です。
そのうえ、申請のときには「介護保健の指定事業者」である書類の写しが求められるのですが、診療所は介護保険では個々の指定は受けておらず、保険医療機関の指定による「みなし指定」となっています。
窓口の担当者によっては、この「みなし指定」のことを知らず、介護保険の指定の書類がないとダメだなどと押し問答になったこともありました。待たされて県警本部に問い合わせてやっと受け付けてもらえたりしたこともあります。
また、府県や警察署によって微妙に書類が異なっていまして、それはそれは面倒なことでありました。診療所も3年目になって、ずっと継続の手続きになっていますので、さすがに最近はスムースにことが運び、4月からの継続のため宝塚警察署に出向いた今日などは、ほんの2分ほどで受理していただけました。
まあ、悪用されては秩序が乱れる指定ですから、いろいろと慎重になるのでしょうけど、できれば統一してほしいものです。いかに自治体警察とはいえ、市民は複雑さにめげてまっせ。