(続)こわもて2011/04/29 22:18

 介護施設が利用にあたって感染症の検査を求めてくることがあとを絶たない。

 今回も某介護老人福祉施設のショートステイ利用に際してそれを求められた。利用者さんは、すでにその施設のデイサービスを利用されているので、あらためてまた求められる理由が私にはどうしても理解できぬのだ。

 とことん喧嘩してもいい(というか、ほんまはそうしたい)のだが、すると、私の患者さんがサービスを利用できなくなる恐れがあって迷惑がかかる。いわば人質状態のため、自費で検査費用を持っていただいて、検査は、した。

 今日、その結果が届いたので、当該施設あてに送ったが、そのさい、以下のような書簡を添付した。

--------
 ご依頼のありました、xxxxxx様の感染症検査の結果をお送りいたします。B型、C型肝炎ウイルス関係と梅毒の検査の3種ですがこれでよろしいのでしょうか。これ以外の感染症については不要なのですね。

 ところで、現在、医療機関や介護施設では「スタンダードプリコーション」という手法でケアに当たることが常識になっています。これは、すべての人は未知のものを含めて感染症を持っていると考えて、感染の危険のあるものについてガードするというものです。つまり、感染症があろうとなかろうと、現場での対応に違いはないというものです。もしこのことをご存じでしたら失礼しました。

 したがって、一部の感染症の検査をおこなうことにまったく意味はありません。

 そして、私が疑問に思うのは、なぜ通所介護や訪問介護には感染症の有無は問われず、ショートステイや入所にそれをお求めになるのかということです。これについて、できましたら私を納得させる説明をしていただきたいのです。

 さらに、感染症と保菌(ウイルスを含む)はまったく違うという点をしっかりご理解ください。

 数年前に川西市医師会でこれらについての講演会を実施し、介護施設の代表のかたと合意した事項があるはずですが、時間を経てまったくそれらは忘れ去られたようで残念です。

 おそらく、窓口になっている相談員さんではなく、うしろに控えておられる医療者の圧力だと愚考しておりますので、これ以上申し上げても無意味かと思いますので、もうやめておきます。

 なんだか、脱力いたしますなあ。
----

 相当に嫌みな文章だが、嫌みな文章は私の得意とするところ(笑)。この文書を相談員がそのまま背後の医療者に渡してくれれば嬉しいのだが…。

 今日、旧知の患者さんの奥さまとお話していて、彼女が熱傷の処置をしてもらっているのになかなか治らないと不満をおっしゃっていた。聞けば、その処置は、昔ながらのソフラチュールがらみ消毒バンバンというもの。湿潤療法ならとっくに治っているはずの熱傷なので、黙って聞いていたものの、ちょっと気の毒になった。

 われわれ医者は、すくなくとも患者さんの「抵抗勢力」にならないよう、自戒をこめねばならないだろう。先端医療の知識をかき集めるのも必要かもしれないが、足下の医療をつねに見直し続ける地味な作業が、私らのような町医者には求められるのではないだろうか。