本邦東西朝縁起覚書 by 小松左京2008/04/21 22:44

「本邦東西朝縁起覚書」早川文庫、昭和49年、小松左京
 あるブログで奥吉野の話題になり、ふと小松左京氏の古い中編SF「本邦東西朝縁起覚書」を思い出して読みたくなり、amazonで検索して早川文庫の初版を入手しました。

 後南朝の「自天王」が優婆塞の秘法で時代を超えて眠っていたのを偶然起こしてしまったあとのドタバタを描いた、一種のタイムトラベルものです。小松氏の著作のなかではそれほどメジャーなものではなかったと思いますが、私は高校のころからこういう歴史関係のSFが好きなうえ、ちょうど文庫化されたころに奈良の大学に在籍し、南朝遺跡を巡って遊んでいた時期でもあり、かれこれ40年たったいまでもたいへん印象に残っている作品なわけです。

 ページの周囲が黄ばんで、いかにも古本という体で届いた文庫、開いたとたんに感じたのは活字の小ささと行間の狭さ。つまり、いまどきの文庫に比べて1頁の情報量は3倍くらいあるのではないかという密度でした。そうか、昔はこんなだったんだとしばし感激。

 しかしながら老眼も定着したいまの私には、寝床のけっして明るくない電気スタンドの明かりで読むにはかなりの苦行であったことを白状しておきます。

 これを機会に小松氏の「妄想ニッポン紀行 正・続」も入手。もちろん最近発刊された「小松左京自伝・実存を求めて」もとりあえず手に入れてまして、とうぶん小松氏三昧、青春を取り戻すことにしようかと(笑)。