大淀2008/04/05 23:56

週末午後4時の商店街
 20代と30代に奈良県吉野郡大淀町の町立病院で仕事をしていた。その当時に外科の教えを請うた先輩がその後その病院の院長を務められ、そしてこの3月で定年退職されたお祝いがあり、電車を乗り継いで大淀町まではせ参じてきた。

 まえに大淀に行ったのは、先輩が院長に就任されたお祝いの宴席に参加するためだったので、じつに10年ぶりということになる。

 午後4時すぎに最寄りの下市口駅に着いた。午後5時からの開宴まで時間があったので、勤務していた病院まで駅前商店街をブラブラと歩いた。人がいない。そしてご多聞に漏れずのシャッター通り化が著しい。

 そもそも、大峰山をはじめ奈良県南西部への玄関口である下市口駅には、以前はあちこちに走るバスがたくさん待機し、いわゆる駅前広場然としていたのだが、駅舎は変わらぬものの、駅前はシャッターどころか建物そのものがなくなって空き地が目立つ。バスは1台も停まっていない。タクシーこそ数台待機しているが、乗る人なく手持ち無沙汰の様子である。

 国道から吉野川ごしに見る病院、外観こそほとんど変わりはなかったが、看護師不足のために病棟閉鎖をしていて真っ暗な建物があるのだという。渕の真上の満開の桜がなんとなく寂しげである。まわりにたくさんあった飲み屋さんもほとんどなくなっているということだ。宴会中締めのあと、ほんとうにまったく人のいない暗い商店街を抜けて阿部野橋行きの特急に急いだのは、帰路の道のりの長さを案じてのことだけではなかったのである。